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BBC制作 HIROSHIMAを見て [さらば比較文化論]

先日BBCで放送された「HIROSHIMA」と言う番組を見た。もともあまり期待はしていなかったが、僕はと言えば、結局何日間かの沈黙を余儀なくされた。前半は主に原爆投下にかかわった人たちのドキュメンタリー風ドラマで、後半は主に広島で原爆を生き延びた人達の物語であった。どういう番組であったのかについては、いつものように、ほかに秀逸なブログがあると思うので、そちらに譲る。そういうページがあれば、こちらでもリンクを張るので、コメント欄でぜひ紹介していただきたい。

軽く感想を述べる。見終わったあとは非常にすっきりしないものが残った。長崎の死者数は5万人との言及があったが、広島に関しては人数についての言及はなかった。今でも放射能障害やケロイド(やけど)と闘う被爆者や被爆2世たちのことはほとんど取り上げられなかった。最後に映し出された復興した広島の映像は「平和の尊さ」の象徴ではなく「完全に復興した街。原爆は過去のこと」というメッセージに見えた。

一緒に見ていた友人は「核廃絶など、未来に対するなんのメッセージ性もない」と嘆いていた。僕はしばし沈黙した。イギリス的な受け取り方を考えると「残虐非道な日本との戦争を終わらせるために、広島長崎にあれを落としたのはしょうがなかったが、もしかするとそこまで差し迫った必要はなかったのかもしれないな」ぐらいの問題提起はできているかもしれない。

この番組は、僕が丁度英国を去る時期に見るものとしては非常によかったかもしれないと思った。そして僕は「もてざるものに期待するのは敗北である」という結論を出した。イギリスは日本とは別の意味で、また過去の戦争の負の側面を多く背負っているのである。

この番組のなかでも言っていたが「広島が世界で初めて原爆の犠牲になった」という物言いは、「日本は唯一の被爆国」なとという物言い同様正しくない。世界で最初の被爆者はマンハッタン計画で被爆したアメリカ兵たちであるし、その後の数々の核実験でアメリカ、旧ソ連をはじめ、世界中で数多くの人達が被爆している。そしてその人達は歴史から忘れ去られているといっていい。西洋諸国で原爆が身近に感じられる時があるとすれば、アメリカ兵など、西洋人の被爆実態が大きく報道される時であろう。


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コメント 4

Aa

こんにちは。
敗北ですか・・・。苦いですね。まさにさらば比較文化論。
私は分かり合うことを志向して必死にもがいている人間なので、何かと心に刺さりました。

広島については同じ日本人である私もきちんと理解できているかといえば、自信はありません。せいぜい理解できていないことを精一杯自覚しておこうと思うだけです。
ちなみに私は京都の出身です。京都は空襲を受けなかったというのは誤りなのですが、それでも余所よりははるかに被害が少なかったことは確かであり、どうしても戦争(被害)体験を直接聞くことは間遠いものになります。ましてや広島の方に比べれば、とても遠い。

私も多分、理解できていないのです。それでも私は、三平太さんの感じられた失望に共鳴し、悲しみを覚えます。

ここは阪神・淡路大震災の被災地です。この経験に未だ強くとらわれている人が身近にいます。彼女は社会がこれを忘れ去ってしまうことに、とても強く憤っています。そして震災のメモリアル番組が放映されたり、防災への取り組みが紹介されるたびに、「そんなものではない」と激しい怒りと失望を示します。私は彼女をどうすれば癒すことができるのか、分かりません。癒そうとすることが誤りであり、傲慢なのかもしれないとも思います。
人は体験しないと分からないのでしょうか。そうなのかもしれません。
どうすれば壁を乗り越えられるのでしょうか。越えられないのでしょうか。
だけど私は、越えたいのです。声を届けたいのです。

まとまりがなくて、すみません。
理性と感情がkeyなのかなと考えました。その二つを区別することがではなく、その二つを混じり合わせて存在させることが。被爆感情を理性の中にねじ込むことは、不可能でしょうか。
by Aa (2005-08-10 12:37) 

catenamas

一緒に見ておられた方の様な意見があってほっとしてます。
広島、長崎両市長のような事が言えませんかねぇ。
核保有国では。
by catenamas (2005-08-10 12:43) 

usagi

BBCのHIROSHIMAの立場ですが、私のブログでもコメントしたのですが、中立とは思えませんでした。正確には、中立なんだろうけどこれがBBCの結論なの?という思いです。

エンディング直前に日本人、アメリカ人の順でインタビューがありましたよね。日本人は「アメリカには実際の街と人に対する破壊力を測定するという大義名分の裏に隠された意図があった」と。続いてアメリカ人が「原爆はアメリカが落としたんじゃない、日本の軍人が落としたんだ」と。そしてエンディング。

番組を作るために取材もし実際の撮影もしたディレクターの意図なのか、BBC自体、あるいはスポンサーであるディスカバリーチャネルに対する配慮なのかは分かりません。しょちょう先生のブログに書いてある自由意志についての記事がとても気になるところです。

色々な国の立場などがわかるようなエキシビションを行いたいなと思いました。期間中写真や事実を展示するとともに、各国バージョンのドキュメンタリーフィルムを上映する部屋をつくる、というような。原爆について、被爆について、などどういう事実がある上で、どのような報道がされているのかと伝えられるようなものを、様々な国で多くの人に知ってもらうようにやりたいものです。
by usagi (2005-08-10 15:27) 

三平太

コメントありがとうございます。返事が遅れてすいません。

Aaさん。「どうすれば壁を乗り越えられるか」。返事をいろいろ書いていたら長くなったので、記事をアップしました。こちらをごらんください。http://blog.so-net.ne.jp/sanpeita/2005-08-11-1

catenamasさん。世界の認識方法、歴史認識ひとつとっても、英国が持っている価値観は非常に特異です。彼らには彼らの立場がある。そしてその立場が僕の立場と一致することは極めて少ないということだと思います。

usagiさん。英国人の主観客観に対する感覚(世界観)は非常に特殊ですね。いずれにしても英国は第2次世界大戦に参戦しているし、名実ともに戦勝国です。対独戦に限らず直接の当事者です。日本人は英国より米国に負けたという感覚が強いですが、英国人は日本人が思う以上に「日本に勝った」と思っているようです。「死の行進」などを持ち出すまでもなく、イギリスの戦艦は日本海軍にこてんぱんにやられているし、大英帝国の東洋植民地支配を直接脅かしたのも日本です。そう考えると、英国人の一般的な反日感情もよく理解できる。

各国の立場がわかるような展示、各国バージョンのドキュメンタリーを放映すると言うのはおもしろいですね。そう言う企画はぜひ見たい。とくに日本語で見たいです。
by 三平太 (2005-08-11 22:25) 

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