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トラウマ(心的外傷)と心の癒し -- Aaさんへの返事 [心のケア]

この記事はBBC制作 HIROSHIMAを見てに対するAaさんのコメントへの返信となっています。

Aaさん。「理性と感情がkey」について考えていました。阪神大震災を経験された方のお話、非常によくわかります。そういう意味でトラウマ(心的外傷)体験とは非常に深いものだと思います。テレビの関連番組を見て、「そんなものではない」という彼女の激しい怒りと失望。外傷問題を考える時に避けて通れない非常に重要な要素です。「どうやって被害者を癒すか」そして「何を後世に語り継ぐのか」と言うのはともに大事な問題だと思います。

さて、「どうやって彼女を癒すか」ですが、僕はいろんな体験をすればするほど「癒そうとすることが誤りであり、傲慢なのかもしれない」とは思わなくなりましたし、「人は体験しないと分からない」とも思わなくなってきました。

さて「どうすれば壁を乗り越えられるか」について、僕の考えを述べます。まず「壁を越えたい」「声を届けたい」という強い思いに僕は共感します。(まずわかっておられると思いますが、こういう強い感覚や思いはだれしもが持っている感覚ではありません。今回はその理由については説明しません)。

僕は「わかる」という現象について考えます。「わかる」とか「わかってくれた」という現象は極めて主観的なものです。ですから、わかろうとする側がどんなに良心や肯定的な意志を持っていようと、相手がどう思うかには必ずしも関係がない。良心を実行しようとする人々は、往々にして自分の良心に対する報酬の少なさに、うらぎられ、傷つき、嘆き恨みます。現実はそうだと思います。そう言うと絶望的に聞こえるかもしれませんが、実はそうでもないんです。

僕は自分のトラウマ体験(いまだに何が原因なのかわかりませんが(笑)を癒したり、僕にとってはながらく疑問であった「人間関係」を理解することが目的で心理学、カウンセリング、催眠療法関連、そしてアダルトチルドレン、虐待、トラウマ、心の成長などのトピックについて学んできました。とくにNLP(神経言語プログラミング)と出会ってから、僕は少しずつ癒され、大きく成長し、考え方も大きく変わりました。

その体験から、きれい事ではなく、現実的な話をします。誰か大きなトラウマを抱えた人を「癒そう」とか「『わかってもらえた』と思われたい」(これは自分が「わかりたい」「理解したい」というのとはまったく違うアウトカムです)とすると、これは人の心の領域には入り込んでいくのですから真剣勝負です。まず、相手の価値観を全肯定して受け入れることが必要になります。トラウマに苦しむ人々は、強い反応を示すことが十分に予想されます。しかしそれを全部そのまま引き受けるのは普通無理です。精神的な負担が多すぎるのです。それで、それに対応するには、相手の反応を「判断しない」で「尊重する」という技術が必要になります。僕が学んだところでは、これを「ニュートラル・トレーニング」と呼んでいます。そうすることで、自分が精神的な打撃を受けずに、相手との信頼関係(ラポール)を築くことができます。長く続く信頼関係は「癒し」の第一歩です。あとは訓練です。人に本当に「声を届けることができる」こと(または可能性)を実感できるようになります。

あまりうまくまとまっていないですが、(Aaさんとやり取りする時はいつもそうですが(笑)、思いついたことをもうすこし書いておきます。前述の話とは違ってBBCのHIROSHIMAを見ておもったことの追記です。

極度のトラウマ体験は本人が実際にその事件を体験していなくても、家族、地域など環境からそれを体験する「二次体験」がある。そしてそれはそのできごとに付随する価値観を共有するという意味におい十二分にトラウマ体験たりうる。ぼくが、被爆を実際に体験しているわけでもないのに、BBCのこの番組を見て「中途半端に触れないで欲しい」という被害者意識を持った理由はそこにあると思います。

僕は最終的には、「トラウマを乗り越える」のは自分(個人)なのだと思っています。それをどう引き受け、どう表現していくかにほかならない。だから自分の立場がはっきりし、自分の求めるものがはっきりし、そして相手の立場や求めるものが見えた時に、自分がなすべきことが見えてくる。そういうことがはっきりしないと求めるものは手に入らない。「もてざるものに求めるは敗北である」というのはそういう思考から来ています。敗北は出発点です。状況が分かった以上、リーダーシップを自分がとる勇気と覚悟があれば、勝利はずっと近づきます。今の僕はもう彼らには負けていませんよ(笑)。

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コメント 8

Aa

こんにちは。お返事が遅れてすみません。諸々忙しくて、その後遺症でへばっておりました。
おっしゃること、むしろとても分かりやすく具体的で、ストレートに響きました。
こんなに色々と情報を提供して下さり、どうもありがとうございます。

私は複数・・・というか多数のカウンセラーにかかったことがありますが、その中で唯一気が合って、また症状も快方/陽転の方向に向かったのは、おっしゃるように
>相手の反応を「判断しない」で「尊重する」
という方でした。
「私はただ、『うん、うん』とうなずいて聞いてくれるだけでいいんだ」と言ったことがあります。でもそれは右から左に聞き流すのではなく、しっかり受けとめて理解して向き合ってくれて、なおかつうなずいてくれるだけという・・・非常に贅沢な要求でした。
あと、確かに相手の意見はいらないのです。何故ならそれは、本来求めていないことだからです。・・・本当に贅沢かつわがままですね(苦笑)。

これもおっしゃるとおり、トラウマや心的外傷は自分で向き合い解決するしかないのです。だけどただそれでは疲れてしまうのです。その時、自分は一人ではなく誰かに理解されているのだと感じることは、安らぎになります。次に向かうためのちょっとした休息、安息の地を与えてくれます。求めたのはそういうことでした。
私は心理学については詳しくありませんが、「ニュートラル・トレーニング」のニュートラルとはそういう意味も含んでいるのではないかなと、多少願望混じりの推測をしました。

しかし自分の場合は何を求めているかここまで分かっているくせに、いざそれを他者に対して実行しようとすると急速に自信がなくなってしまうのは、難しいところです。私には学問的知識の裏付けが足りていないということもあるのでしょう。
また「病人に病人は癒せないのだ」という思いもあります。健常者であってすら、おっしゃるように「精神的負担は多すぎ」るのですから。ちょっと条件後出しで申し訳ないんですけど。
でもやっぱり私がまったくの健康であっても、本当にそれは真剣勝負でしょうね。自分が傷つくことを恐れず、またまったく見返りを求めない、そういう境地が必要な気がします。日本的に言えば明鏡止水の心持ちでしょうか。そうやって、結果的に相手の心を優しく柔らかに映し出すことが出来れば・・・これは邪念ですね。
カウンセラーの場合であれば、金銭というある意味ニュートラルに無味乾燥なやり取りによって、報われることが出来ます。また相手とつながりがないことは、むしろ自分自身を守ることに、また相手をも踏み込みすぎないという形で守ることに、プラスに働くでしょう。

やはり本来癒しとは、プロの手によって行われるべきであるような気がします。プロが行う癒しの手法と、身内が行う癒しの手法はここでは分けて考えるべきではないのでしょうか。また、「癒そう」とする場合は過程がどうあれ「踏み込もう」とするスキルですが、むしろ身内の場合は心的外傷を抱えた人から「身を守る」スキルを、重点的に考えたほうが、結果として相手のためにもなる気がしてなりません。・・・ちょっと話が脱線していますね。

「敗北は出発点である」と考えておられることに、何故か安堵しました。そう、私も敗北は出発点だと思います。映画「バットマン・ビギンズ」でも、「なぜ落ちたのか?――這い上がるためだ」という台詞が印象的に何度も使われていました。
どん底に落ちて地面から空や世界を見上げた時に、始めて見えてくるものがあると思うのです。そして同じ地べたに落ちている小さなものに気が付くこともあると思うのです。・・・抽象的です。

実は今、ちょっと酔っぱらっています。それでもこれは理性的に書いたつもりですが、もし何か分からないことがあれば、遠慮なく突っ込んで下さい。これから寝て起きてクリアになった頭で、今度は冷静にお返事させていただきます。

酔っぱらいついでに書きます。私もまた多くの「分かってくれない」体験をしました。そしてたくさん傷つけられ、傷つきました。そうしてどん底に落ちて思ったことは、私はそれでも彼らを愛しているということでした。
私は、分かってくれなくてもいいんです。でも、私は彼らを分かりたい。その結果、自分が傷ついて壊れてしまうとしても・・・。きっとそれは健康な思考ではないのでしょう。だから私の病気は治らないのでしょう。それでも私はそうやってしか、生きていくすべ(理由)を見つけられませんでした。
ただ問題は、こんな自分は人を癒すことが出来ないということです。

まあ私個人のことはいいんです。だけど問題が国と国になった場合は、ことは健康的に解決すべきです。日本は自分が抱えるトラウマと向き合うべきでしょう。誰かに解決してもらうことを期待するのではなく、自分たちで理性的に乗り越えなくてはなりません。そうしてまた相手の立場も理解し、その上で語りかけようとしたいです。いつかきっと妥協点を見いだせることを信じながら。そこには永久に到達できないことを知りつつ、それでも進むべきだと思います。それが未来に向かうということです。

丁寧で親切なお返事、本当にどうもありがとうございました。
by Aa (2005-08-12 18:04) 

三平太

Aaさん、お返事どうもありがとう! 今回もいろいろてんこ盛りですね。毎回ですが、思いついたことを書いていきますね。

「右から左に聞き流すのではなく、しっかり受けとめて理解して向き合ってくれて、なおかつうなずいてくれるだけという・・・非常に贅沢な要求」と書かれていますが、全然贅沢でわがままな要求だとは思いません。そういう思いはむしろ当然です。多くの人がそれを求めています。そういう意味でカウンセラーに対する要求は日増しに高まっていると思いますし、カウンセラーの更なる技術向上が望まれます。僕の経験からも、カウンセラーとの相性というのは確かに存在します。自分が回復したいと言う気持ちを持つと同時に、自分に合ったカウンセラーと出会うというのも、実際に大事なことです。

「最終的には自分で向き合い解決する」というのは、軟弱な僕の意思表明(笑)みたいなものでした。人間関係が双方向のものである以上、全て自分で解決することはできないし、それだけでは本当に疲れて(!)しまいます。自分に自信がなくなったり、弱く感じる時、ぼくがやるのは「そのままの自分でいい」と自分に言ってやること。そのままの不完全な自分を受け入れ、承認してやることです。自分のことをもっと大事にしてやる、声をかけてやる。じつはこのブログのタイトル「愛をとりもどせ」は、そういう意味で自分に対する愛情を取り戻そうというところから付けたんです(笑)。

じつは僕にとって学問的裏付けというのはほとんど必要ないんです(笑)。もちろん興味があるのでいろんな書物を読みますし、また考え方に影響を受けることもあります。でも、最終的には効果があればいい(笑)。僕の立場は学者方やお医者様方がなんと言われても、有効性第一です。(僕は足にできたイボを「おまじない」と「鳩麦を食べる」ことで直しました(笑)。

僕が言う「ニュートラル」というのは、人に対する時だけでなく、自分に対しても言えることです。それは往々にして僕に安らぎをもたらします。自分が弱くなっている時、そんな自分を「判断しない」で、そのままの自分を認めてやる。


さて、僕はよく思います。自信や尊厳を奪われ、やみくもに周囲を攻撃していた過去の自分を。それは僕がなりたかった自分ではなかった。では、どういう自分になりたいのか、何が手に入れたいのか。気がついたら、奪われていたのは、そういうことを考える能力でした。そして、僕にとってそれを見つけていくことは、心に浮かんでくる小さな小さなこと、そのたいしたことないひとつひとつを、実際に実行に移してみるということでした。これは勇気がいりますね(笑)。そういうことに慣れていない人には勇気がいる。でも、そんな、人にとってはどうってことのない、自分のための小さな勇気が僕は好きなんです。「あなたは、そのままのあなたでいい」「僕は、このままの僕でいい」。そこからいろんなものを創っていきたいのです。
by 三平太 (2005-08-13 11:05) 

Aa

こんばんは。お返事どうもありがとうございました。
まとまっていなくて、いろいろとすみません。

今回、このやり取りを通じて感じたことを絵にしてみました。
TBするほどのものか迷うので、コメントにてお知らせします。
http://blog.so-net.ne.jp/tracker/2005-08-14
下手な絵ですけど、ご笑覧下さい。
by Aa (2005-08-14 17:56) 

三平太

Aaさん。「希望」ですね。見てきましたよ。素敵な絵ですね。方向を変えるとホント違った感じ。今回のやり取りと繋がっているなら、ぜひTBしてください! 
by 三平太 (2005-08-15 23:28) 

taro

三平太さん、

初めまして。Aaさんとのコメントに割って入って申し訳ありません。三平太さんのコメントに感じるところがあり、ご意見を伺いたくなりました。あ、しょちょうさんのBlogから流れてきました(笑

神経言語プログラミングや、ニュートラル・トレーニングについて詳しく知りたいのですが、参考になる書籍やWebがあれば、教えていただけないでしょうか。長文でなければ英語も大丈夫です。

私のケースでは、PTSDとなった彼女をわかって上げたいのですが、彼女のことを「全面的に受け入れる」ということができていないように思うので、知識や技術面のことを少しでも学びたいのです。

お手数だと思いますが、よろしくお願いいたします。
by taro (2005-08-17 13:32) 

三平太

taroさん、はじめまして。僕が講習を受けたNLP研究所のホームページに、NLP理論の概要が載っています。
http://www.communication-labo.com/sl_nlpij/nlp/index.html

一般的なNLPの入門書としては「NLPのすすめ」という本があります。PTSDや心の癒し関係では斎藤学医師が主宰するIFFのホームページに秀逸な書籍リスト「心の本棚」があります。
http://www.iff.co.jp/frame/booksales.html

「ニュートラル」というのは「ニュートラル・ポジション」のことで、「自分の立場(第一のポジション)」「相手の立場(第2のポジション)」を越えた「第三のポジション」です。これらのポジションは訓練によって切り替えられるようになります。これを学ぶと「わかってあげる」「受け入れる」という心の仕組が理解でき、実践できるようになります。

さらに何かありましたら、遠慮なく直接メールしてください。sanpeita727@mac.com
僕の知っている範囲内でお答えします。
by 三平太 (2005-08-17 21:21) 

taro

三平太さん、

早速お返事を頂き、ありがとうございます。NLPのWebはざっと目を通させていただきました。とても参考になりそうです。また、メール・アドレスも教えていただき、ありがとうございます。お言葉に甘えて、メールでご相談させていただくかもしれません。

改めて、ご厚情に感謝致します。

taro
by taro (2005-08-17 23:44) 

三平太

taroさん。参考になりましたらうれしい限りです。何かありましたら遠慮なくどうぞ!
by 三平太 (2005-08-18 07:52) 

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