走行中、電車の扉をこじ開ける話 [ロンドン生活]
東京では地下鉄の扉が走行中に一斉に開くという珍事があったらしい。
ロンドンも負けてはいない。
今日乗ったBR(ブリティッシュレール=旧国鉄)のシルバーリンク(リッチモンドーストラトフォード間)での出来事。僕はウエスト・ハムステッド駅から東行きの最終電車に乗った。この区間の電車は、乗降時に乗客がドアの開閉ボタンを押して、ドアを開けるシステムになっている。このシステムは半自動ドアといって、日本でも寒冷地のローカル線などで採用されている。
途中駅で、20歳前後の青年が列車から降りようとして、ドアの開閉ボタンを押した。「OPEN」と書いてある円いボタンは、停車時に発光する仕組になっていて、降車が可能なことを示していたが、何度押しても開かなかった。けげんな顔をして何度もボタンを押し続けるばかりだ。
こういうの立ち居振る舞いはあまり地元のロンドン人らしくない。こういうことが起こりうることをみんな知っているので、「Fuck!」「Shit!」となどと一言いうか、もしくは何もなかったかのごとく冷静さを装いながら、急いで他の扉に移動し乗降する。それで万が一降車できなくても、文句を言い続ける前者も、冷静さを装う後者も、仕方がないと、どこかにあきらめる心積もりがある。青年は仕草にもどこか他の欧州人に見え、もしかするとこの街ではこういうことが起こりうるということを知らなかったのかもしれない。
さて、運転手が全ての扉を閉め、電車はゆっくりと走り出した。降りることのできなかった彼は困った様子でボタンを押し続けている。車両の中ほどには今風のヒップホップスタイルに身を固めた「ギャング風」の一団が座っていた。そのなかのひとりが急に座席を立って、扉に駆けつけてきた。彼は走り出した電車の扉を手でこじ開けはじめた。電車は減速するも、停車はしない。半分以上扉が開き、降りそこねた青年は、扉を開けた若者に礼を言い、電車からホームに飛び降りた。
電車でも、バスでも、減速しているとはいえ、多少のスピードが出ているものから飛び降りるのは技術がいる。青年はホームの上で大きく転倒した。それを見たギャングの一団は大笑いをはじめた。他の乗客は、青年がどうなったかには無関心で、窓をのぞき込むものもいない。何も起こらなかったかのような静けさの中に、ギャングの一団の笑い声と、何もなかったかのごとく加速をし始めた電車のモーター音が響いた。
Oh my gosh,,, So scary. When are you leaving London? Directly back to Jaoan?
by Usagi on the road (2005-08-19 03:45)
こういう光景は、日本ではありえない話で、ある意味すごくロンドン的ですよね。僕がロンドンを発つのは21日ですよー。
by 三平太 (2005-08-19 09:06)
うーん、なんか想像できる風景です。ロンドンって、やっぱりがら悪いですね…。
by どらとら (2005-08-20 05:30)
そのギャング風の一団は実はとても親切だったんじゃないでしょうか?
やり方は荒いかもしれませんが、困ってる人を助けるのは勇気の
いることですよ。
俺も昔、突然道で話しかけてきた
ジャマイカンの3人組に助けられたことがありました。
by T造 (2005-08-22 04:23)
結構「世話好き」の若者たちだったのかもしれないですね。それと他の乗客の無関心さが対象的でした。この一件が終わったあと、僕は車内を見ながら一人にやにやしていたわけですが(笑)、彼らのようなコミュニケーション、俺はきらいじゃないですね。
by 三平太 (2005-08-24 08:01)