ロンドンの物乞い(1) [イギリス回顧録(1999〜2005)]
大英博物館のそばホルボーン駅のバス停でバスを待っていた。時間は夜の2時、待っているのは家に帰るためのナイトバスだ。平日の夜は30分に一本しか無い。バス停につくとあと20分以上もある。ファリンドンに行きたいと言っているフランス人二人組に道を教えたり、日本食品店でもらってきた日本人向けフリーペイパー「週間ジャーニー」と「週間ニュースダイジェスト」を読んで時間潰す。
すると、初老の男性が話しかけてきた。
「お金がなくて食べるものがない。5pめぐんでくれないか」
「5ペンス?」
「ええ、5ペンスでいいんです」
5ペンスといえば日本円にしてたった10円。ロンドンでは泊まるところがない、食べ物が買えない、家に帰るお金がない、泥棒に遭ったなど、さまざまな理由でさまざまな人達がお金を恵んでくれといってくる。それにしても5ペンスとは少なすぎる。いったい施しをしようと思う人のどれだけが言われた通り5ペンスを差し出すだろうか?
はじめ僕に話しかけてきた時、彼の顔は両眼が半分白眼を向いていて、それがかすかにぴくぴくとけいれんしていた。意識も朦朧として、歩き方もどことなくちぐはぐとした感じで、何かいろんな不運に見舞われて、何もかもうまく行かず不幸なのだという雰囲気だった。僕は最初、持っているだけの小銭をわたそうとしたのだけど、1ペニーや2ペンス硬貨ばかりで、あまりに額がこまかいので、5ポンド札(1000円)をあげようと思った。しかし、財布の中には10ポンドと20ポンド札しかなく、結局10ポンド札をあげることにした。
「じゃあ、10ポンドあげますよ」
というと、彼の顔が完全に変っているのに気がついた。さっきまでの半分白眼をむいた顔は、健康な人のそれそのもの。意志をはっきりともった真顔になって、その目を大きく見開いている。背筋もしゃきっとして、どうみてもさっきの人とは別人だ。
「え、本当に? どうもありがとうございます。神の祝福がありますように」
かれはそう言って立ち去っていった。
三平太さん、お久しぶり。
そして試験お疲れ様でした!
三平太さんの日記を読むと何だか安心して
ちょっと元気になります。
ここ1ヶ月ほど多忙を極めており、自分の首を
自分で絞めている状況にやっと気づきました。
気づくのは苦しいことだったけれど、明日から
心機一転、頑張ります。
by ai (2005-06-10 22:39)
この話、絵が見えた。
by makiri (2005-06-11 12:06)
aiさん
元気が出ますか? そういってもらえるとうれしいですね。 試験が終わって一週間です。これから夏本番です(w
makiriさん
絵が見えましたか? どんな絵だったのでしょう? ファンタジーな絵? それともリアリズム?
by 三平太 (2005-06-11 20:56)